Hystoric Glamour ミツキの私情価値 vol.22



ヒステリックグラマーの
HYS SYMBOL 2PACS / CIRCLE HEAD 2PACS


Begin
クリエイティブディレクター
ミツキ
1977年生まれ。ワールドフォトプレス『mono magazine』編集部を経て2006年に世界文化社(現・世界文化ホールディングス)入社。以来『Begin』一筋で主にファッションを担当。2017年〜2021年まで同誌編集長を務める。現在は(株)世界文化社・上席執行役員。メディアをまたいで新規事業開発に注力。“中坊マ インド” を座右の銘に、既存の出版ビジネスを超 えた制作チームを率いるディレクターとして奮闘中。




















ミツキの
どこがイイの?買い説
この企画の根幹である。“鮮烈なグラフィック”の裏側にある“モノの良さ”と、文頭のリードにあるけれど、今回買い説するパックTシャツほど、
このミツキの私情価値のテーマにピ~ッタリ&ブランドの本音が垣間見えるモノは他にない。パックTと聞くと、多くの人はヘインズに代表される“消耗品”を思い浮かべるだろう。日々着用して日々洗う、くたびれたら買い替える……だから価格は安いほどいい、のは間違いではないし、パックTの出自からしても、常識と言っていいだろう。でもね、服好きになればなるほど、その常識に少し違和感を覚えるようになるし、また“消耗品”として割り切る&所有感を満たす“嗜好品”として区別するようになる。例えば、同じ白Tでも“なんでもいい日”と“これじゃなきゃダメな日”がある。誰かに見せるためだけじゃなく、自分が気持ちよく過ごすためにその一枚を選んでいる。その違いは値段だけでは説明できない。着たときに首元がどう見えるか、洗いこんだ生地はどう馴染んでいくか……。一枚で来た時のシルエットはもちろん、シャツやジャケットのインナーとしてどんな存在感でいてくれるか。そういう積み重ねが、消耗品であれ嗜好品であれ、「ただの白T」を「オキニの白T」へと変えていく。先述したように、ブランドにとって白Tほど本音が現れるモノはない。ヒスにとってどんなTシャツが理想か、という答えがそのままカタチとなっているのだ。どんなカルチャーに影響を受け、どんな服作りを重ね、何を美と考えてきたのか、そのすべてが飾りのない一枚に凝縮されている。今回はそんな「ヒスの本音」が詰まった一番肌に近い服、パックTについて買い説していきたいと思います。
HYSと出合って30年あまり……編集稼業を通して白Tほどブランドの性格が出る服はないと思っている。Tシャツはどこのブランドでも必ずラインナップしている存在。デイリーウェアで言えばデニムもある、スウェットもある。が、パックTまで作るブランドは、意外と多くない……。というのも、無地のパックTというのは、グラフィックに目を引くこともできない、刺繍やプリントで特別感を出すこともできない、ブランドにとって最も飾れない商品となる。そこにあるのは生地と、シルエットと、着心地オンリー。つまり、「ウチはTシャツをこう考えています~」という、ブランドの思想が丸裸になるわけだ。HYSのTシャツレシピは10種類以上存在する。その中から“松”=最高峰、“竹”=本命の2つをパックしたのがこの2型だ。
まず、“松”モデルは「生地には40番双糸のシーアイランドコットン」を使用している。……と、これだけ聞くと難しいよね~(笑)でも簡単に言えば、「細くて上質な糸を、さらに2本撚り合わせて編んだ生地」だ。だから肌に触れた瞬間、しっとりしていて、Tシャツなのにニットのような品がある。しかも原料は“コットンのカシミヤ”とも呼ばれるシーアイランドコットン(vol.19の記事参照)。繊維が長く、毛羽立ちが少ないから、何度着ても滑らかな風合いが持続するのだ。そんな上質ボディに対して首元。
ここにもHYSらしいこだわりが隠れている。Tシャツのリブは身頃と同様に細い糸でスッキリ見せることが多いが、あえて少し太めの糸を使うことで、首元にしっかりとしたコシが生まれる。何度洗っても首元がよれることなく新品状態をキープするのだ。つまり、
身体に触れる部分は極上の肌触りに。
一番傷みやすい首元はタフに。
この“役割ごとに糸の番手を使い分ける”コントラストな発想がいかにも機能性も重視するHYSらしい――。
Tシャツの世界では、この数字を知っておくと、生地のキャラクターがぐっとイメージしやすくなる。基本的には、数字が小さいほど糸は太く、数字が大きいほど糸は細くなる。例えば、チャンピオンをはじめとするアメリカンベーシックのTシャツによく使われるのは18番~20番あたり。あの少しゴワっとしていて、ドライな肌触り。着始めは無骨だけれど、洗い込むほどに味が出る、いかにもアメリカらしい風合いは、この太めの糸が生み出しているのだ。
一方、“竹モデル”に使われているのは40番手。先述した18番や20番手に比べると、ずっと細い糸になる。しかも、編み方といえば、一般的な天竺がTシャツ界のスタンダードならそのワンランク上をいくスムース。表と裏を同時に編み立てる両面編みだから、生地はふっくら、肌当たりは驚くほどなめらか。重厚感がありハリがあるので型崩れしにくく、一枚で着ても品よく決まる。袖を通した瞬間、「スムース」の名を言葉通りに体感するはず。だから生地の両面はきめ細かくて肌を滑るようになめらか。それでいて頼りない印象はなく、適度なコシもしかり備えている。
つまり、“竹モデル”は、アメリカンベーシックの無骨さを残しながら、上質さや品の良さを同居させたということ。一枚で着ればTシャツなのにどこか品が良く、シャツやジャケットのインナーに合わせれば、ゴワつかず身体に馴染む。迷わず手が伸びる理由は毎日着たくなるちょうどよさ、その問いに向き合った結果が、この生地なのであーる。また、身頃をリブで包み込むように縫製し、首元に厚みと強度を持たせた「バインダーネック」仕様はずっと首元しっかり♪
Tシャツは首元9割、どんなに生地が良くても、首元がヨレてしまうと、途端に清潔感を失いますしね。
こうしてみていくと、HYSのパックTには生地も首元もシルエットもすべてに理由がある。で、裾に付くピスネームやさりげないワンポイントを見てニヤリとする。「あ、ちゃんとHYSを着ている」そんな満足感を、派手に主張することなく味わえるところがいい。
極上の着心地と、毎日着たくなる実用性。
そしてHYSを着ているという所有感。
そんなすべてがパックされているから、このパックTは単なる“消耗品”で終わらない。声高にブランドを語らない、でもちゃんとHYSを着ている……。そんな絶妙な距離感もこのパックTが長く愛される理由なんじゃないかなぁ。いいパックTとは「気付けば一番着ているTシャツ」ってのがミツキの私情価値。その理由をHYSが満たしている。だから今日もクローゼットを開けると結局HYSを選んでいる自分がいる。洗濯機では洗わず、毎回手洗いして大切に着ているけどね。
100字でわかる“ミツキの目ウロコ話”
パックTってなぜ生まれたの?
「パックTシャツは、兵士からの「着替えをまとめて支給・購入したい」というリクエストをきっかけに、1900年代前半のアメリカで誕生。複数枚を一袋にした販売方法が定着し、戦後は肌着から一枚で着る日常着へと進化していった。」