Hystoric Glamour ミツキの私情価値 vol.18


ヒステリックグラマーの
KINKY JEANS プリズナーシャツ



Begin
クリエイティブディレクター
ミツキ
1977年生まれ。ワールドフォトプレス『mono magazine』編集部を経て2006年に世界文化社(現・世界文化ホールディングス)入社。以来『Begin』一筋で主にファッションを担当。2017年〜2021年まで同誌編集長を務める。現在はメディアをまたいで新規事業開発に注力。“中坊マインド”を座右の銘に、既存の出版ビジネスを超えた制作チーム「ファンベースラボ」を率いるディレクターとして奮闘中。
ミツキの
どこがイイの?買い説
やっぱりさ、洋服とは
育てるもんだよ、と再認識
ミツキが青春を謳歌した90年代……、小さなイケてるインポートショップを覗けば、オックスフォードのBDシャツが、わざわざ洗いざらしで陳列されていてね。「オックスシャツはワンウォッシュで着るのが正統!」というカジュアルの流儀を店員の兄ちゃんから教えてもらったもんです。カジュアルシャツってドレスシャツとは真逆の着こなしのセオリーがあって、シワが命(笑)。よく、デニムでもワンウォッシュという加工もあるけれど、シャツだってノンアイロンでさらりと、肩肘張らず羽織るのがカッコいいのだ♪
オックスフォードBDにチェックネル……etc.いつの時代も必要なベーシックシャツは数あれど、ミツキにとってはシャンブレーシャツって、定番好きへの扉を開いてくれたMYファーストベーシックかな~。前々回のコラムでも触れたけれど、写真上、私物のシャンブレーは、『プレンティス』というファクトリーブランドのモノ(詳しくはvol.16 参照)で、デッドストックと着込んだ後のビフォーアフター。今、ミツキのクロゼットには長袖2着、半袖2着、デッドストック1着、計5着のシャンブレーがありますが、もう20年以上前のモノですから、当時から20㎏以上増量で、減量しないと着られるわけがありませ~ん(笑)。
そんな状況下、久しぶりに着たい!と思えるシャンブレーを見つけちゃった♪ というのが今回紹介するシャンブレーシャツ。デッドストックのようにノリが付いてパリっとしていてね、作りもシャンブレー好きのハートをワシ掴みにするHYS流のフュージョンと、何よりデニム同様に“着込んで育てる”楽しみが味わえるシャツ。市場に出回るシャンブレーとは一線を画す私情価値をじっくり買い説していきたいと思います。
なんともHYSらしい
“KINKY”なフュージョン♪
「シャンブレー」とは平織りの生地で、発祥とされるフランスの「カンブレ(cambrai)」地方から名付けられたという説が有力。「デニム」が「サージ ドゥ ニーム(sage de nime)」、生地の発祥地が由来であるのと似ているんだよね。デニム同様に丈夫であることからワークウェアに多く用いられた代表的な素材ですが、中でもシャンブレーシャツはあらゆる職種に多用されているのが特徴で、今回はこの職種のフュージョンに触手が伸びてしまったというのも事実。
“ブルーワーカー”というコトバが指すようにタテに青糸、ヨコに白糸で織った霜降りブルーの生地はさまざまな労働者の制服として機能してきました。工員や船員に軍人、そして囚人まで(笑)。そう、商品名であるプリズナーシャツは、“囚人シャツ”なんですね。このシャツ、ヴィンテージフリークの中では知る人ぞ知るレアな存在で、ナンバリングプリントが特徴。そんなとこまでHYS十八番のグラフィックでしっかりファッションとして昇華されていますね。で、細部を見てみるとブルーボタン! 実は、映画『砲撃のサンパブロ』でスティーヴ・マックィーンが着こなしていたシャンブレーよろしく、“ブルーボタン”というのは海兵隊仕様。
つまり、プリズナーとネイビー
(囚人と海軍)のフュージョンなんです。
前面にはプリズナーのスタンプ、そして背面にはミリタリーのステンシル調でプリントを施すなど、ヴィンテージをよく知るシャンブレー識者にはたまらん♪ “わかってるな~”という要素を何ともKINKYな合わせ技で仕上げているというワケ。肝心のファブリックといえば、60年代のヴィンテージのシャツを分解。糸の解析から打ち込みの密度までも分析して当時の生地感を再現しています。糸もタテ糸にはムラ糸、ヨコ糸には落ち綿を入れることで、味わい深い凹凸とネップ感まで表現♪染色もその風合いをそのまま生かせる、昔ながらの技法で行うなど、テッテー的なこだわりは言わずもがな。そんな職人のノウハウが凝縮された生地を、まるで極上のデッドストックに出合ったかのようにリジッド=生から堪能できるってのがたまらないじゃないの!
店頭ではスタッフからの説明、ECでは洗濯後のサイズ表記がありますが、洗って縮めて!着込んでいくことで、自分の身体に馴染ませていく。これぞまさに“シュリンク トゥ フィット”。デニムよろしくシャツも自分色に育てる。辺りを見渡せば、大型モールに画一化され、退屈な服ばかりが氾濫する昨今。使い捨てのモノ選びとは真逆の、10年着たい、着られるベーシックなのだ――。
100字で語る
“シャンブレー”とは
「シャンブレーとは、タテ糸に色糸、ヨコ糸に白糸を使った平織りの生地で、ダンガリーは同じ織りだが、タテに白糸、ヨコに糸色とシャンブレーと糸の構成が逆。デニムはシャンブレー同様の糸構成で綾織りの生地を差す。」
紡績(糸を作る)段階から
風合いを目指して独自に開発
写真のように、ヨコ糸の白がネップのようにところどころポコポコと表れている。このナチュラルな素材感はヨコ糸に落ち綿を入れることで実現している。計算し尽くされた、まさに芸コマだ。
グラフィックプリントも
兵と塀をフロント&バックに
前面の0727、SUPER HYSはプリズナーシャツのディテールを元にアレンジ。そして背面のKINKYJEANSは、ミリタリーで使われるステンシル書体に。ヴィンテージを知り尽くしているからこその合わせワザ。
このブルーボタンこそ
海のワークシャツの証
たかがボタンされどボタン。いつも付属のボタンやファスナーにまで抜かりないHYSだが、この青いボタンこそ海軍シャンブレーの特徴。ちなみに陸軍のシャンブレーもあるが、白ボタンとなる。