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CULTURE2021.02.26

米原康正 × 北村信彦 「日本が世界に誇るべきサブカルのエロティシズム」

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かつて思春期に燃えたロックな女子たちをテーマに語り合うこの対談企画。最終回となる今回は、日本が誇るサブカルチャーでグッときた女子の話に。いつしか話は、フェティッシュともいえる新しい感覚の“グッとくる”ものの話に……!?
本物を知る彼らが見出した、新しいエロティシズムの話をお届けします。

― 前回はグッときた女の子というところから、グッときたカルチャーまでお話が展開しました。今回も引き続き、グッとくる女子を取り巻くカルチャーなどについて伺えたらと思います。


米原康正(※以下、米原) : オーケー。そういえば前々回分でさ、早起きしてドラマ観るって言ってたじゃん。朝早く目覚めちゃうから録画したのをぼーっと眺めてるって。俺もそうなのよ、朝っていうか夜中に起きちゃうの。

北村信彦(※以下、北村) : そうそう、二度寝すると余計キツイから(笑)。だからネット見たり、ドラマ観たりしてるんだけど。米ちゃんはどうしてる?

米原 : 最近はネットフリックスで今まで観てなかったアニメを観てる。『東京喰種』とか『ワンパンマン』とか。あと、『ワンパンマン』の原作の人が描いた『モブサイコ』ってのも面白いね。これは、もともと漫画雑誌じゃなくて、アマチュアの作家がwebで無料で公開してたんだけど、絵があまり上手くなくてさ(笑)。それをプロの漫画家が作画で入って商業誌に行ったのがアニメ化されてヒットしてるんだよね。

北村 : へぇ、新しい流れだね。最近、漫画は伸びてるんだっけ?

米原 : いや、カルチャーとしては伸びてるんだけど、本自体が売れてないみたいだね。作品的には、最近の声優人気もあってアニメになってから伸びるんだって。声優の配役で話題になったりするらしいよ。これって日本の独特の文化だよね。

北村 : 日本のアニメカルチャーって世界的にもすごいんだよね。海外のあるアンケートで、政治家から戦国武将までジャンル関係なく有名な日本人を聞いたら、マジンガーZの主題歌とかを歌ってたアニソン歌手の水木一郎が上位に入ってたらしいよ。

米原 : へぇ~、すごいね。

北村 : やっぱり日本の漫画・アニメのカルチャーは強い。音楽でいうとヘヴィメタルみたいに、客をしっかり掴んでるんだよ。時間もお金もつぎ込む、いわゆるオタクってやつを生む文化。

米原 : 支えてるのが30~40代だから、ある程度お金も持ってるしね。この時代でもCDがバンバン売れるのってすごいよ。アイドルブームもそうだけど、日本発のサブカルチャーの勢いがすごい。

北村 : そうそう、最近だと『おそ松さん』がすごかったね。声優が豪華で、社会現象になってたもん。イベントの動員もすごいし、グッズもかなり売れてるらしい。

米原 : その熱い勢いってさ、二次元・三次元を問わずそこに性的欲求を覚える人が少なからずいるってところだと思うんだよね。対談のメインテーマに戻るけど、グッとくる性的対象がそこにいるんだよ。俺たちも子どもの頃、そうだったもんね。

北村 : アニメでグッときたっていうと、俺たちの世代ならやっぱり『キューティーハニー』だよな。

米原 : そうそう! 永井豪世代だ。ちなみに俺は『ふしぎなメルモ』のメルモちゃんにグッときたわ。薬を飲むと若返ったり、年をとったりするんだけど、そうすると小さい服がパツパツになったりして。当時はそんな描写にドキドキしてたなぁ。

北村 : あと、アニメじゃないけどウルトラマンの女性隊員もグッときたね。アンヌ隊員だっけ? ひし美ゆり子が演じてた女性隊員。スーツがパツパツでエロいんだよね。この間も話したけど、クランプスのポイズン・アイビーとかスマッシング・パンプキンズのダーシー・レッキーみたいに、屈強な男たちの中の紅一点っていうのも“オンナ”が際立っててさ。

米原 : 特撮もグッとくる女がいたね。俺はキャプテン・ウルトラのアカネ隊員が好きだった。城野ゆきの顔が純和風なのに衣装がアメリカっぽくて、その浮いてる感じがなんだかグッときちゃって。子どもながら、性的な昂ぶりを感じたのを覚えてるよ。

北村 : それはマニアックだな(笑)。でも最終的にはさ、やっぱり峰不二子に行き着くんだよね。アニメ界だけじゃなく、日本人の共通意識としてのセックスシンボル。ロックでいうと、ジミ・ヘンドリックスみたいな(笑)。“セクシーな女”像を、実在する人間以上に確立してるんだよ。どの世代に聞いてもきっと、セクシーな女は?って聞かれたら間違いなく峰不二子が上位にランキングするんじゃない?

米原 : たしかに。グッとくる女のシンボルといえば峰不二子だ。直接的なエロはほとんどないんだけど、絶対的にセクシーだもんね。すごいわ、峰不二子。

いま世の中に必要なのは新しい“グッとくるもの”

米原 : 最近は、アニメとか漫画のカルチャーと同じようにAVのカルチャーもだいぶ発展したし浸透したけど、それが普通になっちゃうと想像力が奪われちゃうような気がするんだよね。さっきのアンヌ隊員とかアカネ隊員の話みたいに、エロを狙ってないのになんかエロいみたいなところにクリエイティブな要素があるんじゃないかって。

北村 : 俺もそう思う。すっぽんぽんより服を着てたほうが、なんならエロとは無縁の場所にこそエロがあるんじゃないかって。

米原 : だからかな、洋モノのポルノを初めて観た時時、全然興奮しなかったんだよ(笑)。なんか女が主導でさ。

北村 : 洋モノのポルノはもはやスポーツだね。

米原 : ハイ、一緒に気持ちよくなりましょー!みたいな感じだからね(笑)。AVなのに奥ゆかしさが欲しいってのはやっぱり日本人だからなのかね。

北村 : アハハハハ(笑)。

米原 : まあでも逆にスポーツにもエロさはあるわけよ。個人的に最近ハマってるのは、マラソンとかでゴールして倒れる瞬間 (笑)。なんとも言えないエロティシズムを感じるんだよね。あ、それはちょっと違うか(笑)。

北村 : まぁでも、そういう新しいグッとくるものが欲しいね。ここ何年かで草食男子って言われる性に消極的な男が増えたじゃん。でもそれって世の中に直接的なエロが溢れかえって飽和状態だから、ちょっとうんざりしたり諦めてたりする部分があるからだと思うんだよ。きっと待ってる状態なんじゃないかな。

米原 : うん、それはすごく感じる。新しいエロティシズムが必要なんだよね。

北村 : 俺たちがキャバクラとかガールズバーに飽きてきて、品のいいスナックの方が面白いよねって感じてるような、秘めたエロスに惹かれる感覚ね。なんなら最近女の子たちもそっちにだんだん移行してきてるわけでしょ。何かしら今の時代にフィットするツボがありそうなんだけどな。俺たちがどうこうってわけじゃないけど、そういうツボを探していきたいと思うね。

米原康正

編集者・アーティスト。東京ストリートな女子文化から影響を受け、雑誌などメディアの形で表現された作品は、90年代以降の女子アンダーグランドカルチャーを扇動した。早くから中国の影響を強く感知し、そこでいかに日本であるかをテーマに活動を展開。微博フォロワー268万人。2017年より前髪をテーマに作品を発表している。

北村信彦

1962年生まれ。東京モード学園を卒業し、「ヒステリックグラマー」のデザイナーとして活躍。1960年代後半〜80年代前半のカルチャーを中心に、ロックやアートを洋服として表現。ファッションのみならず、森山大道の作品集の発行など、洋服という枠に収まらない表現を行っている。

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