ロンドンを拠点に活動するアーティスト IVY。 ダークでどこかユーモラスなタッチが印象的な彼女のグラフィックは、見る者の感覚を刺激する独自の存在感を放つ。今回、HYSTERIC GLAMOURの持つ反骨精神と遊び心に、彼女の内側にあるイメージが重なり合い、唯一無二のビジュアルが生まれた。 本インタビューでは、制作の背景から日常に潜むインスピレーション、そして彼女の創作に対するリアルな感覚までを紐解いていく。
Q1
写真撮影を始めた理由を教えてください。
最近また手描きをするようになりましたが、とても自然に戻ってこれた感覚があります。 大学ではイラストレーションを専攻していて、もともと一番しっくりきていたスタイルでもありました。 グラフィックデザインの分野に進むにつれてデジタル作業に頼ることが多くなりましたが、最近は再び手描きの要素を取り入れるようになっています。 何年も前にぬり絵の本を制作したことがあり、ずっと第2弾を作りたいと言い続けていましたが、ようやく本格的に制作を進め始めました。 ページのスケッチを描いたり、内容をブラッシュアップしています。 それと並行して、友人の@Seapunchとバッグのコラボレーションも進めています。長い間話し合ってきたアイデアなので、とても楽しみにしています。 日常ではStüssyでビジュアルマーチャンダイジングの仕事をしていますが、クリエイティブな活動やプライベートとのバランスも大切にしています。
Q2
今回のコラボレーションはどのような流れで実現したのでしょうか?
以前からHysteric Glamourにはずっと憧れていて、特にノブさんのビジョンには強く影響を受けてきました。 家族ぐるみの知り合いということもあり、これまで自分の作品が変化していく過程を見てくださっていたので、今回のコラボレーションは自分にとってより一層特別な意味を持つものになりました。 これまでにも自分のデザインをチームに共有していたこともあり、今回の機会はとても自然な流れのように感じました。 クリエイティブな面でも、自分にとってこれ以上ないほどフィットするプロジェクトで、本当にワクワクしました。 制作には時間をかけましたが、信頼して任せていただけたことにとても感謝しています。 完成した作品をこうして発表でき、さらに実際に自分のデザインを身に着けてもらえるのは、本当に夢のようです。
Q3
作品を生み出すうえで、日常の中からどんな瞬間にインスピレーションを感じますか?
正直に言うと難しい質問です。私は昔から空想するのが好きでした。小さい頃は、想像だけでいろいろなことをしていました。 成長するにつれて、だんだんダークなイメージやテーマに惹かれるようになりました。綺麗で可愛いものよりも、少し不穏でグロテスクなもののほうが好きです。 携帯には死んでしまった動物の写真を集めたアルバムがあります(ちょっとひどく聞こえるかもしれませんが…すみません)。 ロンドンでは、道端で落ちている鳥やネズミを見ることも珍しくありません。 悲しくて不安な気持ちになるものですが、それでもどこか美しいと感じていて、そういったものを描いたり作品に取り入れるのが好きです。 つまり、自分のアートのインスピレーションは…日常そのものかもしれません。

Q4
HYSTERIC GLAMOURはあなたにとってどんな存在ですか?
特別に何かを象徴しているというわけではないと思います。でも単純にすごく好きなんです。 ずっとすっごくアイコニックなブランドであり続けているし、これからもそうだと思います。
Q5
今回のコラボTEEのグラフィックについて教えてください。
正直あまり大きなストーリーはありません。 「Bad Bear Tee」は、実は自分の腕に入れているタトゥーを少し可愛くアレンジしたものです。18歳のときにデザインして入れた、初めてのタトゥーでした。 内臓が飛び出した小さなクマです。そこにガールフレンドを加えて、単なるイメージではなく一つのシーンになるようにしました。 「Naughty Kitty Tee」はマスクをした女性で、カムガールのようなイメージを思い描いていましたが、解釈は見る人に委ねています。 描いていたときは特に深い意図はありませんでした。元々のデザインは『Ex Machina』のようなサイボーグ風でしたが、少しセクシーすぎると感じて猫に変更しました。


Q6
グラフィック表現へと自然に向かっていった原体験はどんなものでしたか?
小さい頃から落書きが大好きで、自然と身についた感覚です。数学のノートの隅という隅に絵を描いて、パラパラ漫画のようなものを作っていました。 成長するにつれてイラストに興味を持ち、Central Saint Martinsで数年間学びましたが、途中で退学しました。正直かなり大変でした。
Q7
あなたに影響を与えたグラフィックアーティストはいますか?いれば教えてください。
好きなアーティストは長い間Damien Hirstです。賛否はありますが、ホルマリン漬けの動物作品のような少し不気味な表現にずっと惹かれています。 グラフィックアーティストではToshio Saekiがとても好きです。グロテスクで奇妙で、時に笑ってしまうほどの作品です。 彼の作品を見ると、どうやってこんな発想を思いついたのかと驚く一方で、自分が先に描けなかったことに悔しさも感じます。 彼の作品は、自分の中の少しダークな要素を表現する自信を与えてくれましたし、奇妙なものを描く楽しさも教えてくれました。 今回のTシャツは少しポップ寄りですが、こうしたアーティストから、アートは必ずしも美しくある必要はないと学びました。


Q8
ロンドンという都市は、あなたの創造性にどのような影響を与えていると感じますか?
正直に言うと、ロンドンは時々自分の創造性を鈍らせると感じます。雨が多いですし…。田舎やどこか旅行に行っているときのほうが、インスピレーションが湧きやすいと感じます。 よりゆったりしていて静かな環境で、人を避けながら歩いたり、仕事のメールにすぐ返信しなければならなかったりすることもありません。 色も豊かで、感覚が活性化されるので、アイデアが自然と浮かびます。一方で都市では、創造的に考えるのが難しいと感じることもあります。 ロンドンは自分のホームですが、ここで育つことと、大きな夢を持って移り住むことは全く違うと思います。例えばニューヨークに引っ越したら、きっと想像力やアイデアが溢れ出ると思います。 とはいえロンドンは新しい人と出会い、同じ興味や趣味を持つ人たちと繋がるには素晴らしい場所です。人に教えたり、逆に学んだりすることもできます。 街自体が常にインスピレーションを与えてくれるわけではありませんが、グラフィックやイラスト以外の面でも、違う形で創造性を刺激してくれます。 一番良いアイデアは、街から離れたとき、あるいは逆に家でベッドに寝転がってリラックスしているときに浮かぶことが多いです。
Q9
日本のファッションカルチャーに触れて、どのような印象を受けましたか?
日本のファッションカルチャーはとても好きです。恐れずに表現していて、とても自由で個性的に感じます。 強いアイデンティティがあり、実験的なことや限界に挑戦することを恐れていないところが魅力です。細部へのこだわりも強く、とてもクリエイティブだと思います。 日本のパンクカルチャーの歴史にも以前から興味があります。西洋のパンクとは別の形で発展しながらも、同じような反骨精神を持っている点がとても面白いです。 サブカルチャー、個性、そして強いビジュアルアイデンティティの融合は、今でも日本のファッションに影響を与え続けていると思います。 Hysteric Glamourは、その反骨性と遊び心のバランスを体現していて、とても刺激を受けています。 日本に行くと、いつも人々の着こなしの良さが印象に残ります。ただ「かっこいい」服を着ているというだけでなく、それぞれのスタイルにストーリーや意図が感じられます。 ヴィンテージでも日常着でも、とても自然体で完成されているように見えます。



Q10
これから挑戦したいコラボレーションはありますか?
正直に言うと、Hysteric Glamourはずっとコラボレーションしたい夢のブランドだったので、もうこれで満足して引退できるくらいです(笑)。 今回グラフィックを作るのが本当に楽しかったので、これからも何かしら作り続けていけたらいいなと思っています。 ずっとベッドリネン用のグラフィックを作りたいとも思っていました。最近はかっこいい寝具ってあまり見かけないですよね。 少し見落とされがちな分野だと思いますが、もっと遊び心のあるシーツがあったらいいのにと思います。少し変わったデザインを作ってみたいです。 それからNeighborhoodも好きなので、お香立てのデザインもぜひやってみたいです。とても細かいディテールがあって、まるで彫刻やアート作品のようですよね。 全体としては、自分の美意識に合っていて、自由にクリエイティブな挑戦をさせてくれるブランドであれば、どこでもぜひコラボレーションしたいです。 どんどん来てほしいです!

Ivy Johnson (アイビー・ジョンソン)
2001年生まれ、ロンドン在住。
イラストレーター/アーティスト
幼少期より自己の深層心理、生き物、人体の構造に深い関心を持ち、それらの探究をテーマにアートとして表現している。過去に発表した作品は、ロンドンでカルト的な人気を誇るGimme5やGOODENOUGH UKのグラフィックとして採用された実績も持つ。現在はアーティスト活動と並行してTATTOO ARTISTとしても活躍中。
Biography
2019年 原宿のSO1ギャラリーでソロ個展”LIFE,LOVE,DEATH”を開催
2021年 塗り絵ブック”COLOURING BOOK by IvyJohnson”発売 / SO1オンライン、UNDERCOVER(Madstore)、Gimme5オンライン
2022年 James Lavelleのお誘いで韓国”Byyond the road”に出展
2022年 ロンドンのギャラリーで”Karad WW”グループ展 開催
2023年 Bloodsplit コミックグループ制作
2024-2025年 Stussy London store VM(ビジュアルマーチャンダイズ)担当
2025年 GARGLE presenting Adult Entertainment,Sadie Coles HQ詩の朗読
