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HYSTERIC BOOTLEG meets Suicide
Interview with SYUNKI
HYSTERIC BOOTLEG vol.5

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1970年代、ボーカルのアラン・ヴェガと、シンセサイザー/ドラムマシーンを操るマーティン・レヴによって、NYのアンダーグランドシーンで出現したアーティストユニット、Suicide。 1977年にパンクカルチャーが産声を上げる前から、独創的なパンク的なスタイルとフィロソフィーを音源やライヴコスチュームで表現していたことから、のちに「プロトパンク」と呼ばれ、世界的なアーティストたちにも多大な影響を与えた逸材だ。そんな伝説的アイコンをテーマに、HYSTERIC BOOTLEGが独自の視点でファッションへと昇華させたPOPUPを開催。 そこで、デザイナーSYUNKIに、そのインスピレーションの根源とコレクション制作の裏話に聞いてみた。

Interview & Text: Hiroshi Kagiyama

――まず、SYUNKIさんと同じ世代の大半の人たちが、Suicideとアラン・ヴェガの存在を知らないと思うんですが、そもそもSYUNKIさんがその存在を知るきっかけは何かあったんですか?

SYUNKI:
文化(服装学院)の学生の頃、NOBUさんとJONIOさん(UNDERCOVERデザイナー)がDJするパーティに遊びに行ったんですが、そこでNOBUさんに、「ヤバいバンドって何ですか?」って話しかけたら、「CANとSuicide」って教えてもらって。CANはその頃から聴いていて、スイサイダル・テンデンシーズは知ってるけど(笑)、Suicideって何だろう?って。それがきっかけでしたね。

――そうだったんですね。聴いてみてどうでしたか?

SYUNKI:
最初は「こういうバンドがいるんだ」ぐらいに思っていたんですが、その後に時代の順を追っていろいろと聴いたり調べていくうちに、Suicideの名前が時々出てくることがあって、気になってよく聴くようになったんです。たしか、「PUNK MUSIC」という言葉自体を彼らが初めて使ったんですよね。

――パンクシーンが生まれた1976年より前ということですね。まさにプロトパンクと言われる所以ですね。

SYUNKI:
PUNKって、ある意味で、「世の中をどうしたいか」っていう思想も包括したカウンターカルチャーだと思うんですが、Suicideはもっとプロパガンダ的というか。

――50年以上経っていても、そのスタイルや音楽自体も色褪せないですよね。

SYUNKI:
アラン・ヴェガ本人も、思いっきりカッコつけてますしね(笑)。

――なぜ今回、Suicideとアラン・ヴェガをフィーチャーしようと思ったんですか?

SYUNKI:
去年の夏に、アーティストのAPROと一緒に行ったPOPUPのテーマをSuicideの『Dream Baby Dream』という曲にして、APROにもBabyの作品を描いてもらったんですが、その流れも汲んで今回はSuicideをテーマにしたいとイメージがあったんです。

――具体的に、今回はどんなものづくりを軸にしていますか?

SYUNKI:
基本的にはアラン・ヴェガのライヴ衣装から着想を得て服づくりをしました。当時の彼を調べていくと、基本的にバンダナを巻いているんですが、その中でも、腕章を付けたり、ベトジャン(*1960〜70年代のベトナム戦争時代、米兵が現地で刺しゅうを施したジャケット)を後ろ前に着ていたりしているんですが、学生運動のような感じもするというか、おそらく当時起こっていたベトナム戦争への反対意識がすごく強かったと思うんです。今回は彼のそういうプロパガンダ的な表現も意識しました。あとは、彼がよくレザーを着ていたりしたんですが、アウトフィット自体がちゃんとファッションに見えるんですよね。彼はまさに僕が思い描くロックスターのルックス、という感じです。なので、今回は彼の1970年代の初期のスタイルをもとに、HYSの過去のレザーものやジャケットなどを、知り合いの職人さんにスタッズを打ってもらったりして再構築しました。

――今回はすべて1点ものになるんですか?

SYUNKI:
スタッズベルトだけはオリジナルで作ったんですが、基本はすべて1点ものですね。Tシャツは、企業ものの上からグラフィティするようなイメージで、HYSのいろいろなパロディ的なグラフィックTシャツの上から、今回作ったグラフィックをオーバープリントして仕上げました。

――そこもBOOTLEG的な表現ですね。SYUNKIさんにとって、Suicideが他のパンクシーンのバンドと違う点はどんなところだと思いますか?

SYUNKI:
やっぱり音ですよね。エレクトロニックのああいう音楽スタイルって当時にしてはとんでもなく早かったと思う。僕の好きな文脈のアーティストたちも影響を受けていますしね。


――このプロジェクトのために、ビジュアル撮影もしたんですよね。

SYUNKI:
今回撮影したモデルに、ウィッグを使ったんです。というもの、アラン・ヴェガの当時のライヴ映像とかを観ていくと、もしかしたら彼がウィッグを被ってたんじゃないか?と個人的に思ったりもしていて。彼が晩年にはよく帽子を被ってるんですが、その時も前髪をちょっと出したりしていて、それを見たらさらにそう見えてしまって。でも、仮にウィッグだとしても、プロ意識が高いなとも思うんです。

――その着眼点は面白いですね。では、Suicideを知らない今の世代の人たちに、今回のプロジェクトをどうアプローチしていきたいと思っていますか?

SYUNKI:
まずは、純粋にSuicideの音楽を聴いてみてほしいという気持ちがあります。歌詞だったりメッセージ性もすごく強くて、アルバムジャケットも血が垂れてるようなデザインにすることで、彼自身の身の回りに起きたことを表現しているんだと思います。今、世界で戦争が起きているということも大きいんですが、僕らの世代からしても考えさせられるというか。僕らにもそういうことが身近になってきたのかなと感じています。だから、今回は、アラン・ヴェガのアティチュードを僕なりにデザインして、ファッションで表現した、という感じが強いかもしれないですね。彼の衣装には都度、星のモチーフを取り入れてられていて、おそらくチェ(・ゲバラ)的な思想も意識していたのかもしれないですが、今回はそのニュアンスも汲みたいと思って、ベトナム戦争と星をモチーフにしたワッペンを作ったりもしました。ワッペンには、NOBUさんが僕らぐらいの年の頃にHYSで手がけた「Punishment School」(お仕置き学校)っていうコレクションがあって、みんなにわかってほしいというか、そこに入ってほしいというようなメッセージを込めて、そのフレーズを引用させてもらいました。

――自分たちなりの今の表現のひとつということですね。

SYUNKI:
そうですね。僕らのほうから、こういう思想が正解だとかいう気はさらさらなくて。戦争が起こっていることの会話をすること自体が、世間的にタブーみたいな風潮もあるように感じていますが、まずは僕らの世代がそういうことを普通に会話できることが大事だし、今回のプロジェクトをきっかけに政治的なこととか戦争が身近になっているということに興味を持ってほしいなという想いがあります。


――個々に今の時代背景をどう捉えるかですよね。そういう意味でも、HYSTERIC BOOTLEGが今後どんな活動を展開していくのか楽しみです。

SYUNKI:
ポーランドにHYSが好きな友だちがいるんですが、ポーランドにHYSが上陸したことがないらしく、彼らはヨーロッパで唯一HYSを扱っているイタリアの「Slam Jam」まで買いに行っているみたいで。彼らがフェスも主催しているんですが、そのタイミングに合わせてHYSTERIC BOOTLEGのPOPUPをポーランドでやろうという話も上がっています。ポーランドって、1968年ぐらいに国が大きく変わる学生運動があったそうなんですが、その学生運動のロゴとSuicideのロゴがすごく似ていて。どっちが先かはわからないんですが、今回のプロジェクトの伏線にもなればいいのかなと思っています。

――それも楽しみですね。まずは、渋谷店のPOPUPも期待しています!

SYUNKI

2001年、東京生まれ。10代前半から裏原宿のファッションシーンに魅了され、洋服制作の基礎を学び、自主制作を始める。スタイリストとしても活動を開始。2019 年にこれらの経験を活かし、英国文化やカウンターカルチャーに通ずる服づくりを軸にしたブランド〈JANCHY〉を立ち上げる。2022年、〈CIRCLE HERITAGE〉を設立し、翌23年の春夏シーズンからデビュー。2023年からは、HYSの膨大なアーカイブを用い、解体・新たに構築し直した〈HYSTERIC BOOTLEG〉を、ブランドオフィシャルのシリーズとして手がけている。馬場圭介さんとは十代の頃に出会って以来、多大な影響を受けている、SYUNKIにとっての重要人物。