ART2020.04.29
8月23日からヒステリックグラマー渋谷店でスタートするエキシビション『“IBUKI YOUTH” HYSTERIC GLAMOUR BOOTLEG by IBUKI SAKAI』はタイトルしかり、いつになくフレッシュな空気とキラキラと眩しいポジティブなパワーが会場を包む。主役はミレニアル世代から強い支持を受けるモデルでアーティストの酒井いぶき氏。ヒスのデザイナー・北村信彦の心をも動かした、若き彼女の魅力とは? 展覧会直前の2人のスペシャル対談をお届けします。
北村信彦(※以下、北村) : 面白い子いるよって。自分でタイまでオリジナルのステッカーを作りに行っていたり、それをカスタムして作品にしていて、かつ’90sのヒスのアイテムもコレクトしているって。希子(水原希子)が立ち上げた個人事務所やブランドの<OK>の仕事も手伝っている話も聞いて、以前に希子が自分やその周りが’90sのヒスのアイテムをネットや古着屋で集めているって言っていたのを思い出した。だからきっと希子たちが可愛がっている若い連中の1人なんだっていうのが繋がったから、初めていぶきと会った時も打ち解けて話せた。その時もうちの昔のバッグ持っていたよね。
酒井いぶき(※以下、酒井) : たまたま行ったカラオケスナックに知り合いがたくさん来ていて。ノブさんともそこで初めて会いました。
北村 : そう。そこからすぐ会社に遊びに来て。自分で作ったステッカーと、コレクションしているステッカーシート(DMに使われているキラキラのステッカーなど)を見せてくれたらその中にヒステリックミニのブートステッカーが入っていて。いぶきが、今度またタイにステッカーを作りに行くって言うから、いっそのこと公認のヒステリックブートステッカー作ってきてよって提案して。
酒井 : それなら私はファンジンも作りたいって、色々とアイディアを話していたら、ノブさんが、じゃあ渋谷店で何かやってみる?言ってくれたのが、スタートです。
北村 : いぶきの話を聞いていると、SNSもツールとしては使うけど、すごく行動力がある。例えば僕が教えた本をネット上で検索して終了じゃなくて、ちゃんと実店舗にいってチェックしてくるし。ちょうど渋谷店のギャラリースペースも若い連中のために使えたらいいなって考えはじめた時期だったから、タイミングもよかったんだよね。
酒井 : ノブさんが私の持っていたヒスのトマトバードのニットのバッグを見て、そのキャラクターを作ったヨーコさんの話をしてくれて。個展が決まってから、ファンジンは自分のヒスコレクションで撮影するってアイディアがあったから、ヨーコさんにも作品を貸してもらえないかとインスタでDMしたんです。そうしたら、ぜひ参加したいって言ってくれただけでなくて、そこでテーマになっているブートレグの話もしたら、ヨーコさんが過去に作ったぬいぐるみ作品の生地等を変えたブートレグを自分で作ろうかなって言ってくれて。
北村 : さっきの行動力の話だけど、多分僕がヨーコちゃんの話をして10日後くらいにはいぶきが、ノブさん、ヨーコさんに会ってきましたって。それにその時点で展覧会に参加する話にもなっていた。びっくりするよね。
酒井 : 笑。ファンジンの撮影も友達のカメラマンじゃなく、自分が知らない人のほうが面白ことになるし、もっとぎりぎりまでヒス感を出したいってノブさんに相談したら、緒方秀美さんを紹介してくれて。私は秀美さんがフィルムで撮影したブランキー・ジェット・シティの写真集をノブさんに教えてもらってすぐに買って、その写真に惚れていた。秀美さんは20年前にフィルムをやめていて、最初は乗り気ではなかったのに、今、秀美さんがフィルムで撮影したらどうなるか、わがままだけど秀美さんにフィルムで撮られたいって真剣に話したら歩みよってくれて、フィルム撮影が実現しました。アシスタントに譲ってしまった、ずっと使っていた唯一のフィルムカメラを20年ぶりに使って撮影してくれたんですが、最初はフィルムの巻き取り方も忘れていたほど久しぶりで(笑)。でも現像してみたら、本当に写真が素晴らしかった。本人もダメなカットは1枚もないって言うくらい、いい撮影ができました。
酒井 : 今まで私が作ってきたステッカーの作品や証明写真機を使ったフォトブース、ファンジンを作るっていうのは自分でも考えていたことだったけど、嬉しかったのは、ノブさんが自由に好きなことやりなよ、じゃなくて、いぶきの等身大のステッカー作ったら面白いんじゃない?とかアイディアを出してくれたこと。ただのサポートに徹することもできるのに、私がやりたいことに対して一緒にモノを作ろうっていう目線で入ってくれた。それですごく今まで楽しく準備もできています。
北村 : それは親目線に近い感覚かな(笑)。普通は、温めていたネタは人には言わないけど、等身大ステッカーはずっと作りたいって思っていたのもあったし、いぶきが自分の写真をステッカーにしているから、それを等身大でやったら面白いじゃんって思ったんだよね。タイトルも先に決まっていた『ヒステリックグラマーブートレグ』だけでもいいかなって思っていたけど、ヨーコちゃんの参加を聞いて、じゃあDMはヨーコちゃんのキャラクターでステッカー風のデザインにしよう、って考えた時に、たまたま他の仕事で見ていた本にソニック・ユースが出ていた。あ、ソニック・ユースいいな、みたいな。本当にその場その場で決まっていった感じ。
北村 : タイトルの“YOUTH”じゃないけど、ちょうど90年代にキム・ゴードンやソフィア・コッポラ、リタ・アッカーマン、ブランドのXガールとかが台頭してきたガールズムーブメントがあったじゃない。いぶきや希子のやっていることや話を聞くと、形は違えどどこかあの当時の空気感に似ている感じを覚えて、当時を思い出した。しかも、ソニック・ユースって唯一、ブートレグを認めたアーティストなんだよ。来日した時は新宿のレコード屋で自分たちのブートモノを漁っていた事もリンクしたよね。
酒井 : その当時のカルチャーで簡単に発信できるファンジンも流行っていて。ソニック・ユースとかはそのカルチャーの最前線の人たちだったと思う。秀美さんとの写真は写真集にしたい気持ちもあったけど、今回のコンセプトやカルチャーのバックボーンを考えたら、ファンジンって形がベストだと思いました。
北村 : ソニック・ユースのキムもこれを見たらヒステリックグラマーでこの展覧会ね、ってピンとくるはず。この展示をやることにしてから、いぶきが’90sのヒスの服を漁っていることや、時代的な90年代ブームのことも重ねて、自分は90年代にどうしていたかっていうのが、いい感じに頭の中でリンクしてくれて。自分と一緒に育ってきた同世代の連中をピックアップするのも面白いけど、自分たちよりひと世代下の娘のような若い連中に貢献したい気持ちと、お互いにリスペクトがある関係で何かできたらいいなってずっと思っていたことを実現できたのがよかったかな。
酒井 : (照)! これは本当にファンジンを見て欲しいです。ヒスやノブさんへのラブレターみたいなものだから。
北村 : お父さんが娘から貰う手紙みたいな感じ(笑)?
酒井 : そんな感じです(笑)! 今回参加してくれた、ヨーコさんも秀美さんも、ヒスをやっているノブさんもヒスのチームの皆さんも本当にかっこいい。そういう人と仕事をしていきたいと思うし、だからこそ高いクオリティになる。ヒスの服が大好き。こんなブランドに出会えたことが嬉しいです。本当にたくさんの人に展覧会を観てもらいたいな。
東京出身。モデルとして雑誌・ショー・広告などで活躍する他、テプラやシール、証明写真を使ったアートワークなどにも活躍の場を広げ、水原希子の手掛けるブランドOKのアートディレクション、細野晴臣のツアーグッズ他、様々なブランドとのコラボレーションを展開。
1962年東京生まれ。東京モード学園を卒業した1984年、(株)オゾンコミュニティに入社。同年、21歳でHYSTERIC GLAMOURをスタート。10代半ばから猛烈にアディクトするロックミュージックを礎に、ブランド設立当初ロックとファッションの融合をいち早く見出したコレクションを提案。ソニック・ユースやプライマル・スクリーム、パティ・スミス、コートニー・ラブをはじめとして数多なアーティストたちと親交を深める。
一方、ポルノグラフィティやコンテンポラリーアートなどにも傾倒、その感性はHYSTERIC GLAMOURの代名詞の1つでもあるTシャツでも表現している。また、テリー・リチャードソンや森山大道、荒木経惟をはじめとする写真作家の作品集を自主制作・出版するなど、現代写真界にも深く携わる。
アパレルブランドとのコラボレーションによるキャラクターデザインも手掛ける、ぬいぐるみ作家。現在、25年間の全作品集「yokodoll book」を制作中。この冬には東京(ヒステリックグラマー渋谷店)にて個展を予定。
熊本県出身。20歳で渡米。N.Y.で多くのアーティストと親交を深める。CDジャケット、ファッション、雑誌、広告界などで活躍しながら、独自の世界を表現する。スピード感と力強さのある作風で、人の内に秘めた本当の姿を一瞬で見抜き、カメラへと収めていく類い希なる技術で多くのミュージシャン、クリエーター、アスリート、世界のセレブから信頼を集める。
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